歯磨き粉の選び方(4)殺菌すれば虫歯や歯周病を防げる!?

「薬用」と表示している歯磨き粉やデンタルリンスにはばい菌を殺菌する効果があります。化学成分で殺菌するものと、天然成分を用いているものとがあります。体への影響を考えると天然成分の方が安心と言えるでしょう。

殺菌作用のある天然成分として使用されている例として「プロポリス」があります。プロポリスはハチが樹液からとってきた成分からできていて、非常に高い殺菌作用があります。ただ、価格は決して安いものではないので誰にでもおすすめできるわけではありません。

化学物質の中で殺菌効果が高く、手軽で安価なものと言えば「イソジン」。皆さんのお宅にもうがい薬として常備しているかもしれませんね。イソジンはとても強い消毒作用があって、医者が手術をするときに手を消毒したり、手術部位の皮膚を消毒するのに用いられます。。

通常の殺菌剤はウイルスには効果がないものも多いのですが、イソジンはウイルスにも効果があるので「殺菌といえばイソジン」、と昔から絶大な信頼を得ています。

ではイソジンで口の中を殺菌したら歯周病菌も虫歯菌も殺菌できて「めでたしめでたし」なのでは?と思う方もおられるかもしれませんね。ところが口の中はそう簡単にできているわけではないのです。

「院内感染による死亡事故」を例に挙げてご説明しましょう。
院内感染による死亡事故とは、病院や医療機関内で、新たに細菌やウイルスなどの病原体に感染して死亡者が出ること。なぜこのような事故が起こるかというと、消毒のし過ぎによる細菌の世界のバランスが崩れていることが原因のひとつです。

細菌の培養をしているところをテレビや写真などで見たことがありますか。培養地を入れたシャーレの中で、こっちは黒いかたまり、こっちは赤、白、緑…と色とりどりに細菌が固まっていますね。これは、培養地の中で細菌たちがテリトリー争いをした結果、それぞれの細菌が縄張りを作って増殖しているからなのです。

病院の中は徹底的に消毒されていて、患者自身も抗生物質を投与されるなどして体の中を殺菌されています。外の世界とは細菌のバランスが全く違うのです。そこに、その病院で使っている消毒薬や抗生剤が効かない細菌が病院内に入った途端、敵となる細菌がいないため、特定の菌が普通では考えられないくらいのスピードで大量に増殖してしまうことで院内感染による死亡事故が起こってしまうのです。

口の中も同じこと。口の中には歯周病菌や虫歯菌の他にも様々な菌がいて、それぞれテリトリー争いをしています。その中を徹底的に殺菌したとしたら…院内感染と同じことで、特定の菌が大増殖して健康に害を与えてしまう可能性があるのです。

口の中全体を殺菌することなく歯周病菌・虫歯菌を減らす方法として、国立感染症研究所の先生が開発した「3DS」というものがあります。これは、マウスピースを使って歯と歯肉の周辺だけを殺菌する方法で、口中にいる善玉菌を殺すことなく、歯の周囲だけを殺菌できる、非常に理にかなった殺菌方法です。

「3DS」を採り入れている歯科医院はまだ少数ですが、今後の歯周病治療の一環として期待が寄せられています。

医学と製薬技術の進化によって「何でも薬で治る」と考えがちですが、歯周病の予防はまずは汚れと歯石の除去、そして口中の細菌バランスを崩さない程度に歯周病菌を減らしていくことが重要です。歯茎の腫れ、痛みを感じたらまずは歯科医院を受診して、早めの歯周病治療を受けることをお勧めします。

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