歯磨き粉の中には「歯周病予防」とか「薬用」などとうたっている商品もたくさんあります。
歯周病菌を殺菌する、炎症を取り除く、血液の循環を良くする、などの効果があるとされています。
しかし、歯科医師としては「初期以外の歯周病は歯磨き粉では治らない」と断言したいと思います。歯周病とは、歯と歯茎の間の「歯周ポケット」に食べかすが残り、ばい菌が繁殖して歯を溶かしていく状態のことです。
中等度以上の歯周病の人の歯周ポケットの深さは4～5ミリに達している場合が多くあります。
歯磨き粉の成分がどこまで浸透していくかというと、歯周ポケットの奥深くまで浸透するのは難しいのです。
「歯肉炎」と呼ばれている段階の、歯周ポケット3ミリ以内の人ならば、一時的に症状が軽くなったと感じることがあるかもしれません。
けれどそれは歯周ポケットに詰まった汚れの中のばい菌が少し減った程度のことで、汚れ自体がなくなったわけではないのです。
例えるならば、食べかすがたくさん散らばって異臭を放っているソファの表面に除菌剤をスプレーしてニオイを消しているようなもの。
一時的にニオイは消えるかもしれませんが、腐敗した食べかすが残っていれば必ずばい菌が増殖してまた匂ってきます。それと同じように、歯周ポケットの汚れを掻き出さなければ歯周病を治すことはできません。
歯茎の奥深くに入り込んでいる汚れや歯石は、歯ブラシやフロスでは除去できません。
やはりちゃんと歯医者に行って歯周病の治療を受けなくてはいけません。
歯周病予防の歯磨き粉は、歯周病の症状を軽くする効果はあっても完治させるものではありません。あくまでも補助的なものだと思って、歯医者の治療を受けてくださいね。